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佐伯泰英氏著『陽炎ノ辻』 [小説]

居眠り磐音シリーズ第一作目。『陽炎ノ辻』 読了しました。
面白かったよ~。このシリーズ、ジャンジャン読みたい
一見、剣客に見えない主人公坂崎磐音(さかざきいわね)がある事情で藩を出奔。
貧乏な暮らしで出会う人々との交流がとてもいい。
政治も絡めた事件も起こったり。
貧乏な長屋に棲んでいるのに、上品で知的で器用で‥‥。
でも剣豪達もうなるほどの腕前。
この主人公はとても魅力的な人物でした。
歴史小説も好きですが、『御宿かわせみ』(平岩弓枝氏著)や『つゆのひぬま』(山
本周五郎氏著)なども市井の人が活き活きとした描かれ方をされている作品も
好き。読むのがひどく遅い私もあっという間に読めてしまいました。
山本耕史くんが主演でドラマ化されるそうですので、楽しみにしています。
読んでると山本耕史くんと重なりましたよ。適役かもね。

陽炎ノ辻―居眠り磐音 江戸双紙

陽炎ノ辻―居眠り磐音 江戸双紙

  • 作者: 佐伯 泰英
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2002/04
  • メディア: 文庫


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晩年に祖国のぬくもりを‥ [小説]

消灯前に少しずつ読んでいた小説を読了しました。
山崎豊子作『大地の子』です。
あまりにも有名な小説で、NHKのドラマとしても「20世紀が誇るドラマ」
に名を残したこの原作。
すばらしい小説でした。

まだ読んでない方 ご注意を↓

陸一心の過酷な人生。
家族で渡った中国大陸での貧しくても懸命な日々を戦火が奪い、祖父・
母・妹の一人を喪った。たった一人残された幼い妹あつ子とも中国人
の人買いによって別れ別れになり、売られた先の養父母からは激しい
労働に遣われた。ひん死になりながら逃げ出した先でも人買いに捕まり
売られているところを一人の教師に助けられた。この養父母から温かい
愛情を受けながらも事あるごとに「日本人」と蔑まれ貶められる。
大学では優秀な成績を修めながら大学院には進学できず、初恋の人に
出自を告白した途端、激しい蔑みの言葉を受けて傷つく。
文化大革命で彼もまた槍玉に挙げられる。言われもない罪状を挙げられ
労働改造所に送られ、極寒の中厳しく危険な労働を強いられた。
「日本人」ということがどれほど彼を苦しめてきたことか。

一方父である松本耕治も贖罪の人生だった。
無理矢理連れて来られた九州で敗戦の報を知る。
懸命に中国に戻ろうとするが、彼らに中国へ帰る手段は断たれた。
一旦故郷の長野に戻るも、開拓団は戻って来ず、中国で全滅の報を聞く。
悲しみの中で東洋製鉄に入り、多忙の中、何度も中国を訪れる。
同じ開拓団で肉親を失った狭間の尽力で、残留孤児探しの道が開かれたから。
勝男達と面識のあった大沢が生存しており、勝男とあつ子が生きている事を
知った。大きなプロジェクトが進んでいるにも関わらず、合間をぬって二人の消
息を探しつづける。
耕治にはいつも「すまない」という罪の意識が心を占めていた。

張玉花として生きてきたあつ
彼女の人生が一番悲惨でした。
勝男と引き離されてから人買いに売られた先はうすのろの息子を持った
辺鄙な貧しい農家。息子が将来嫁をもらう事が出来ない人間だろうから
と父親がこの子を買ってきたのだった。幼い時は労働力として、成長し
たらうすのろの嫁として家畜のような生活を送ってきた彼女は何度も
流産し、腰に激しい激痛を残したまま、畑に借り出される。
ここでは書けないような酷い扱いには溜息が出ました。

それぞれが人生に翻弄されながら生きている姿には「一体誰が悪いの
か」という憤りを覚えました。こんな理不尽な事があってもいいのか!
納得いかない運命を彼らは苦しみながらも受け入れて生きていく。
一心なんてやる事なす事、裏目裏目に出る。それは本人の無能さではな
くて人間の悪意や運の悪さと「日本人」という出自の為。
それなのに人に寄り添っていく姿には心を打たれます。
どんなに辛い目に合っても人間というものを嫌いにならない姿、立派な
人物でした。やはり養父母の愛情や信頼する親友、愛する妻や子、やり
遂げる仕事の充実などがあると人間は強くなれるのでしょうかね。
そう思う時、あつ子の人生は本当に辛くて悲しい物であったと涙を拭かず
にはいられませんでした。彼女にはそのどれ一つもない。
日本の地を踏ませてあげたかった。日本の父に遇わせてあげたかった。

今もなお中国に残された日本人孤児達はいます。
自分の名前も肉親の顔も知らないまま、亡くなった人達もたくさんいるはず。
その意味では一心は父に出会えてよかったのかもしれません。
その二人の父とのはざまに揺れるのですけれどね。

解説に書かれている言葉に山崎豊子さんが「残留孤児」という言葉を使わ
ない理由という事が語られていました。
「残留孤児」の言葉のニュアンスに「自分の意志で決めた」という意味が含
まれているからだそうです。彼らは中国に残りたくて残った人々ではないの
だという事を理解していたからこそだったんですね。
心に残る作品でした。

折りしも兵庫で孤児の方々が日本国の遅い対応を嘆いた訴えの控訴審が
行なわれていたようです。今日のニュースで知りました。
この小説でも書かれていましたが、何も政府は動こうとしなかったようで
すね。日本の家族達と中国の紅十字(中国の赤十字)の方々の努力の
賜物であったようです。随分遅くなってから重い腰を上げたらしく、迅速
に動いてくれていれば、どれほどたくさんの人達が救われていたでしょう。
いつの時代も同じ事ばかり繰り返してる。
いつになったら学習するのでしょうか、愚かなり人間‥‥。
この孤児達の訴えは一審では勝訴を得たらしいのですが、国から不服
申し立てがあり、控訴されたらしい。ここに来てまで政府は自分達の対
応(実際は遠の昔にご隠居されている方々の罪ではありますが)につい
ての反省がないのかと嘆かわしくなりました。
「せめてこの残り少ない晩年に祖国からの温かいぬくもりの心が欲しい」
そんなささやかな願いがどうか届きますように。

大地の子〈1〉

大地の子〈1〉

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/01
  • メディア: 文庫


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